青天の霹靂

2024年5月──
なんの前触れもなく鬼滅の刃にハマってしまった。

世の中に市松模様が溢れ旋風が巻き起こっていたのは2019年らしく、5年の時を経てついに私もその渦の中に取り込まれた。

第4期「柱稽古編」放送開始に合わせ、第3期「刀鍛冶の里編」を贅沢に詰め込んだ特別版を2週に渡って放送していた。私はそれを見た。
今までもこういう特別版はあったと思う。無限列車編は何となく見た記憶がある。那田蜘蛛山の鬼も見た記憶がある。
ただ、ハマらなかった。
真面目に見ていなかったから。多分途中で寝てしまった。気付いたら煉獄さんが死の間際だった。
『このアニメ普通にキャラが死ぬんだ』
そう思った。それ以上の記憶が無い。

今まで私がちゃんと見たアニメというとMAJOR、BLEACH、コナン。
MAJORは野球漫画だから人が死なない。初っ端吾郎のお父さんが事故で亡くなる以外は、基本的に突然人が死ぬことはない。
BLEACHは死神漫画だから既に死んでる人達が登場人物のほとんどを占めている。だからあまり人が死なない。それでもたまにまた死ぬが、既に死んでいる分、死へのハードルが心持ち低かった。
コナンはある意味人が死にまくっているけど、主要メンバーは死なない。死を装ったりはしている。

煉獄さんは突然死んだ。炎柱が死んだ。
冒頭で駅弁を「うまい‼️うまい‼️」言って食べていた人が、うたた寝から覚める頃には死にのうとしていた。
だから少し近寄り難かったのかもしれない。

「刀鍛冶の里編」は、「無限列車編」の後さらに「遊郭編」を経ての物語。
炭治郎が二ヶ月ぶりに意識を取り戻すところから始まった。
壊れた刀を直してもらうため刀鍛冶の集う里を訪ねるが、その里が鬼に襲われてしまったのでみんなで守ろう、という話が2週5時間に渡って描かれていた。

何となく録画した。全く興味が無いわけではなかった。死んだ人に言うのもあれかもしれないけれど、煉獄さんのその後が気になった。

1週目の録画を見た。まだそこまでハマらなかった。1週目分は2週目の放送を待たずに消した。(愚か)

蜜璃ちゃんの存在は記憶にあった。ピンクの髪が印象的だったからかもしれない。花澤さんが声優さんだからかもしれない。
あと鋼鐵塚さんの記憶もあった。前に炭治郎がめちゃくちゃ怒られていた。
正直それぐらいだった。善逸も伊之助も出てこず、あまり親近感がわかない。
(今までの感じ漠然と『善逸かわいいな』と思ってた)

2週目。突然水の壺に無一郎くんが閉じ込められていた。
1週目でこんなことになってたっけ?
確認しようにも録画は消してしまった。
この時の私は何となく、自分の中で物語を落とし込めないまま続きを見たくはないと思った。
コナンのためにHuluに登録しているのでHuluを探した。あるある、めっちゃある。
1話毎の配信だったけど見れそうだった。
ながら見してたかスマホを見てたかで、玉壺と無一郎くんのやりとりを掴めてなかったようだった。つまり未だに何となく見ていた。
スッキリさせてから2週目の録画を再開した。

どハマりした。
何にハマったかは明らかだった。
私は時透無一郎にハマっていた。
目は霞がかったように光がなく言葉も素っ気なくて、小鉄くんとのやりとりを見ていた炭治郎に「言ってることは正しいけれど、配慮が無くてすごく嫌」って言われてた無一郎くんとは思えないほど、炭治郎の"情けは人の為ならず論"に一瞬目を輝かせたかと思えば、次のシーンでは天井を見上げまた霞んだ目で考え事をしていた。
今思えばその時点でだいぶ可愛かった。
あんなに我関せずだったのに、垣間見えた素であろう無一郎くんにとてつもなく惹かれた。
どうやら無一郎くんは過去の凄惨な経験からくる逆行性健忘のようで、ある一定期間の記憶がなく、新しいことを覚えるのも苦手らしい。
助けてくれた御館様の「近くにあるきっかけを見落とさない」「自分を取り戻せばまた強くなれる」という言葉を心の奥底に秘め、吹きこぼれるような怒りを原動力に生きていたようだった。

2週目では無一郎くんと蜜璃ちゃんに焦点を当てた部分もあって、これが良かった。
無一郎くんが剣士になったきっかけとなる過去、蜜璃ちゃんが剣士になった理由、2人のこれまでの歩みについてかなり掘り下げられた。
何一つ見落とさないように見た。

無一郎くんが大切なものを取り戻すことができて、本当によかった。無一郎くんの未来を見届けたい。

2週目を見終わった頃には、頭の中は鬼滅の刃でいっぱいだった。とりあえずHuluに戻って最初から見た。柱稽古編が始まるまでに全部見なくちゃいけないと思った。見まくった。
全然苦じゃなかった。自分でもびっくりした。

鬼滅の刃は、人が鬼を狩るというシンプルな構造に見える。間違ってはないけど、もっと深く見ていくこともできて、これができるともっともっとおもしろい。

鬼狩りが鬼を狩る理由。
それぞれが抱える消えない怒り、悲しみを力に変えて、静かに心を燃やしている。
たとえ自分が頸を切ることができなくても、自分ではない誰かを信じそれを託す。
煉獄さんに託された想いを、炭治郎たちがしっかり繋いでいた。

凄い少年漫画っぽいアニメだ。
あといつの主題歌もとてもアニメに合ってる。

今迄の私は鬼滅の刃に対する解像度が低すぎたと思う。興味を持って真面目に見てたら2019年の私は市松模様に染まっていたかもしれない。
当時の私は「きめつのやいば?へーなんか服とか刀とかBLEACHみたいだね」だった。正直後悔が止まらない。

始まった柱稽古編、柱合会議で報告する蜜璃ちゃんと無一郎くんがそれぞれのらしさ全開でめちゃくちゃ良かった。炭治郎タイプの蜜璃ちゃんの可愛さ(とそれに頭を抱えちゃう伊黒さん)、無一郎くんの客観的に物事を捉えて分析する力…無一郎くん本当に14歳なのか…?

OP夢幻。鬼殺隊と鬼の対立構造を明確に表した主題歌。
「君さえ居なければ」
脈々と繋がれていく剣士の心と、それを裂き続ける鬼。堂々巡りにも見えるこの状況を、苦しむ人を、自分たちの代で終わらせるべく命を賭けて戦う様を表していてすごくかっこいい。

ED永久-トコシエ-
不穏…不穏すぎる……
歌詞もメロディーラインも画も全てが不穏…
不穏をさらに不穏で包んで上から不穏で塗り固めた、みたいな感じですね…ヴゥッ


毎週の放送を心待ちにしています。